技術情報(上級者向け)

このページでは、詳細な解析を行う際に知っておくと便利な、上級者向けの情報をまとめます。

タイム比較グラフおよび区間タイムリポートについて

タイム比較グラフや区間タイムリポートは、ドライビングテクニックをアドバイスする際などに大変便利ですが、条件によっては実際とのずれが大きくなります。データロガーの解析ソフトがタイム比較を算出する原理や、誤差の発生要因について検証します。

タイム比較の算出原理

タイム比較グラフは、GPSによる位置情報が精度良く計測されるようになる以前から、ロガーデータの解析方法として利用されてきました。
その基本原理は、計測されている参照速度から距離を算出し、同じ距離に到達するまでにかかった時間を比較するという単純なものです。この単純なデータでも、常に同じようなラインを走行し、速度が正しく計測されていれば、その精度に問題はありません。
逆に言えば、走行ラインが大きく異なっていたり、速度に誤差があれば、タイム比較にも影響を与えます。

区間タイムリポートで算出される区間タイムも、算出原理は同じです。走行した距離とマップデータを照合して、区間タイムを算出します。

距離補正と走行ラインの違いによる誤差

速度から算出していることから、実際の走行では周回ごとに算出される合計距離は異なります。区間タイムリポートでは、周回ごとに異なる距離をマップデータの距離に合わせて補正して、区間タイムが算出されます。
一方、タイム比較グラフでは、「編集」メニューの「スナップON/OFF」のモードが、ラップ毎に固定されていると、基準となるラップかマップデータの距離に補正されます。一方、ラップにとらわれずに任意で表示されるモードの場合、この補正は行われず、表示されている横軸の開始点からの距離そのままで、2つのラップの比較が行われます。

とは言え、このような補正をかけたとしても、走行ラインの違いで距離が異なれば、多少の誤差が発生します。

わかりやすいように、オーバルコースで検証してみます。極端な例ですが、図の上段のようなAとBの二つのラップを比較した場合を考えます。どちらの周も、半周した部分で計測したスプリットも、ラップタイムもまったく同じで、前半のラインだけ異なると仮定します。

どちらの周も実際に計測されているタイムは同じですが、ロガーデータを表示させると中段のようになってしまいます。このような誤差は、幅のあるコースを走行する以上避けられないものですが、実際の走行でここまで極端な差が出ることはほとんどありません。ただし、シビアな比較を行う際には、このような検討も必要になってきます。

距離補正の有無による違いについてはどう考えるべきでしょうか。例えば、Aのラップがコース後半部分でも同じように大回りしていれば、距離補正をかけることでタイム差比較グラフの誤差は少なくなります。また、別のセッションでの走行でタイヤの外周長が異なる場合など、計測速度自体に実速度との差があっても、距離補正をかければその差を吸収できます。したがって、距離補正がかかっているほうが、タイム差の算出値は実際に近い場合が多いといえます。

ただし、この例のように、ある特定のコーナーで誤差が発生している場合、ラップの後半部分の推移は補正無しのほうが実際に近くなります。この点を次節で検討します。


速度計測ミスによる誤差の例と、回避方法

前節で検討したように、ある特定のコーナーだけ大回りしてしまった場合には、算出されるタイム差にその地点から誤差が発生します。ただし、実際にはこのような誤差はさほど大きくありません。むしろ、タイヤロックなどによる速度計測ミスにより、問題となるような大きな誤差が発生します。

図は、Aim社のページよりダウンロードできるサンプルファイルの例です。上段はホイールスピードが、下段はGPSスピードが参照速度になっています。どちらも、ラップごとの表示モードで、距離補正はかかっています。

まったく同じ比較グラフですが、1000m地点でタイヤがロックしたため、ホイールスピードを参照速度にしていると、この地点で緑のラップが大きく追いついたことになってしまいます。
もちろん、GPS速度を参照速度にしている下段を見れば、この地点で極端な差は発生していないことがわかりますし、このデータのようにGPS位置情報が記録されていれば、表示させて位置関係を確認できます(この地点での両者の差を表示した例)。

とは言え、このようにタイヤロックした場合などは速度グラフからその地点で誤差が発生している事がすぐに判断できます。むしろ、後半部分のタイム比較グラフの推移が実際と異なってしまうほうが、判断を誤りやすいと言えます。この例では、参照速度がホイールスピードの場合、2000m地点以降で二つのラップにはほとんど差が見られません。一方、参照速度がGPS速度の場合では、いったん開いた差が2300m以降で縮まっています。

では、GPSデータがない場合にはどのような判断をすればよいでしょうか。
横軸を距離ではなく時間で表示させれば(同じデータの表示例)、後半部分で実際には差が縮まっていることが大まかにわかります。


また、「編集」メニューの「スナップON/OFF」のモードを変えて、距離補正をかけないという方法は、よりわかりやすい表示が可能です。

ただし、モードを切り替えただけでは、比較するポイントがさらにずれてしまうため、図のようにタイヤロック以降は実際のものとは大きく異なってしまいます。

そこで、グラフ下部の横軸の距離の距離表示部分をドラッグして片方のラップを移動し、タイヤロックがあったコーナーのクリッピングポイント付近を合わせます。
さらに、コントロールキーを押しながらドラッグすると2つのラップをまとめて移動させられるので、タイヤロックがあったコーナーの立ち上がり部分を表示開始部分にします。
すると、図のようにGPSを参照速度にした場合と非常によく合った、実際の推移に近いグラフが表示されるようになります。
(この例では基準となるラップが入れ替わってしまったため、GPSを参照速度としたグラフを上下反転して表示させています。)




なお、このように解析方法の工夫で判断の誤りを未然に防ぐこともできますが、やはり計測データ自体の精度を上げることが重要です。
高度な解析をする際には、以下のようなハードウェア面での対策を検討してください。
  • ホイールスピードを利用する場合は、
    • なるべくロックしづらいホイールを選ぶ。
    • 複数の車輪で計測し、計算チャンネルで最大速度を作り、それを参照速度とする。
  • GPSデータを計測する。
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